「料理好きのうつわと片づけ」レビュー<2>

前回の続きで「料理好きのうつわと片づけ(人とうつわ編集部 )」、この本の内容をおさらいしておくと、

たかはしよしこ、山本千織、大倉千枝子青山有紀、高橋みどり、安藤明子・雅信夫妻、柳田栄萬、恵藤文
この8人の料理家それぞれについて

  • 思い入れのあるうつわ、よく使ううつわ
  • 料理が盛られたうつわの写真と、そのレシピ
  • うつわの取り扱い方、片づけ道具
が載せられていて、その間に著者の「ひとりごと」やQ&Aページが挟まれています。

結構根気よくヒアリングしないと分からなさそうな各人の考えやうつわの扱い方が、共通のフォーマットに落とし込まれていて、それぞれの人に違いが自然と浮き上がってくるのも興味深いです。

そんな濃い内容から、個人的に印象に残ったうつわの使い方(どういう場で使うか)、そしてやはり収納について、を少しピックアップしてみます。

うつわの使い方・収納に出るそれぞれの生活

山本千織(ケータリング弁当料理人)
https://www.instagram.com/chiobenfc/

幼い頃から大人数の食卓を経験してきた人。ケータリングの仕事柄でも多人数に供するため、大きなうつわの使い方が参考になります。

震災でほとんど割れて失ってしまったそうですが、若い頃からうつわを集めていたそうで、最後に使いたいうつわが飯碗と選んでいることからも、日常でうつわを楽しまれているのを感じます

大倉千枝子(おむすび研究家・おむすびまるさんかくオーナー)
http://omusubi-garden.com/
記事:https://hue-hue.com/media/creator001/

「料理を盛るのはどれがいいか、食べるあの人だったらこれがいいのでは」と思いを巡らして選んで食の風景を仕上げる、それがうつわという大倉さん。

そういう時のうつわとしてこの角皿を持ってくるのは、なるほどなぁと思います。うつわがこれ選ぶときは楽しさの絶頂という本人の言ですが、この皿のこういう使い方、さぞ楽しいに違いありません。

柳田栄萬(薬膳料理家・千鳥店主)
https://www.chidori.info/about.htm

うつわ好きが高じて千鳥を水道橋に開いた柳田さん。そのセレクトと同じようにうつわを使ってもらうための骨太な姿勢を感じるインタビュー文です。

そんな柳田さんが思い入れのあるグラスについて語る言葉は新鮮でした。

「毎朝、江波さんのグラスで野菜ジュースを飲みます。…(略)うつわを使うだけで、今日も頑張ろうと必ずやる気が出てくるからなんです」

青山有紀(料理家・青家店主)
https://aoya-nakameguro.com/blog/
青家は移転のためいったん閉店となっています。

「自分のスタイルはこうと決めてこれしか持たないというのは、もったいないなって思うことがあります」
「実用を先に考えてしまうと、それ以上のことが浮かばなくなってしまうような気がするんです。使い方にルールはないし、好きなものだったら絶対に素敵に使えると思う」

何気ないですがロック的反骨さのある言葉でシンパシーを感じます。

下はそんな青山さんの棚。

この棚は自分にとって理想の収納です。気に入って手に入れたうつわを見渡せるオープン収納。浅い奥行きの風通しのよさと取り出しやすさ。

うつわの数が多いと、すべてに思い出があるとしても、扉の内側に仕舞ってしまったものの存在を忘れがちになり、つい取り出しやすいところに置いたものほど使ってしまいます。平等に目に入るよう置かれていることで、自分の持っているうつわを存分に楽しむことができます。

地震の時の被害が心配ですが、そのリスクを日々心配するよりも楽しんだほうがいいと思います。お気に入りすぎて絶対に居場所を忘れないようなうつわだけ引き出し式の背の低い棚(倒れにくい)に入れる、という収納を併用するのが一番おすすめです。

高橋みどり(フードスタイリスト)
恵比寿のtamiseにいらっしゃることも。
http://tamiser.com/index.php

「誰かが使っているから欲しいというのじゃいけないって思うんです・・・好きなうつわで食べたらすごくよかったという経験。これ!といううつわを見つけて、自分で盛りつけて食べるってすごく気分がいいんですよ」

お茶の時間を大事にしているというスタイルには、率直に憧れを覚えます。自分も疎かにしているわけではないのですが、高橋さんの場合はもう寝食と同じくらい生活の一部となっているのを感じ、それだけ喫茶が充実しているのを感じるからです。

それだけの行為なので高橋さんのところにはお茶セットがあるというのも当然といえば当然です。盆と片口と急須と鉄瓶、そして鉄瓶を持ったり水跳ねを吹くための布巾や手拭い。

そのお茶セットが食卓にある写真は、高橋さんの気持ちをよく表現している、そう思えるほど素適写真です。この写真だけでもご馳走様な満足気分になります。

全体を見ても8人の人の好みから本としてうまく絵を切り取っていて、構成・文章編集だけでなく写真にも思いがこもった愛情ある本だと気付きます。

実用的な情報も、うつわの楽しみも、うつわが好きな人の熱量も、いろいろ詰め込まれた、料理も片づけもするうつわ好きの本です。